ナレーション:(私たちは日々、何も不自由なく暮らしています。しかし、一歩間違えば、ボタン一つで世界を不幸に陥れる可能性があることを、決して忘れてはなりません。)
ナレーション:(さて、ここで未知の宇宙に目を向けてみましょう。宇宙は無限に広がり、未知に満ちています。多くの作家が昔から作品を生み出してきました。この物語も、宇宙を題材にしています。多くの情報が飛び交う現代に生きる人々に、異なる宇宙環境で育った男女の冒険を通じて、人が追いついていない行き過ぎた文化科学と滅びゆく生態系や宇宙進出に警告と見直しをメッセージとして送ります。)
また、物語を短くまとめると、「地球人以外のアイヌには死という概念はなく、ただステージを一つ越えたということになる。」という独自の概念を基に、オリンポスアイヌの子孫であるオリンピアアイヌたちが、人間の一郎とともに宇宙船で冒険を繰り広げ、人間の科学文化と生態系の危機に警鐘を鳴らす、という内容です。
第一章『追われる金髪美女』第四節『わかれ』 四節に入る前に、ここまでの一部を振り返りってみよう。横須賀のトラック・ドライバ中川一郎は山梨の仕事を終え、横須賀の会社に戻る途中、御坂峠でアメリカの女性記者、フィルを助ける。二人は恋人同士のように打ち解け、席に着き、食事をしながら話をしていた。同時に、例の黒服たちの4WD車が、店の入り口近くに到着してしまった。 二人はまるで、恋人のように腕を組んで、店に向かった。二人が店内に入ると、一郎が知っている『峠』はカントリー&ウエスタン風に変わっていた。カントリー&ウエスタンのBGMが流れていたが、相変わらず店主の威勢のいい声は健在だった。一郎は少し安心し、フィルに確認した後、奥の席を選んでテーブルに着いた。 フィルは一郎の姉と慕う店の看板娘の沙織に出会い、沙織の人柄に意気投合する。また沙織のお陰で店内にいたドライバー達との交流も出来た。 同じ間、国道沿いの路肩の4wd車では、黒服の一人が助手席で、アメリカ南部訛りの英語で、どこかと無線で連絡を取り合っていた。
さて、続きの場面は、本田と沙織、そしてドライバー達が去った後、フィルと一郎は楽しげに世間話を楽しんでいた。 一郎:「おもしろい連中でしょ?」 フィルは店内を見渡しながら、沙織や本田の姿を追った。 フィル:「とてもいい人たちばかりで、一郎が羨ましいわ」 反対に一郎はフィルの仕事を羨ましく思っていた。 一郎:「なに言っちゃって、そっちなんて、色々な国に行けるじゃん」 突然、フィルは一郎を見つめ、彼が毎夜見る”夢”の話題に話を移した。 フィル:「ところで、さっき、車の中で話していた例の”夢”のことだけど...”リアル・ドリーム”の一種かな?」
一郎は初めて聞いた言葉なのでフィルに聞き返した。 一郎:「”リアル・ドリーム”って?」 少し考えてフィルが一郎に答える。 フィル:「そうね、日本でいうなら”正夢”や”予知夢”って見たいなものね。それに加えて、既に経験したことがあるような感覚を引き起こす”デジャブ”なんかも含まれているかもしれないわね」 宇宙オタクの一郎は彼女の話に、ドンドン引き込まれていく。 一郎:「ああ、”デジャブ”って、初めて行った場所が知ってる場所みたいってあれだよね」 フィルは一郎が理解できるように説明した。 フィル:「そう、私たちは夢で見た事が実際に起こったり、以前来たことが、あるような感覚を持つこと。それらは”リアルドリーム”、”ベリディコル・ドリーム”、プロファティック・ドリーム”、ドリームトルー”って、そうね。それらは全て同じ現象を指しているわけではなくて、状況や解釈によって名前が変わるのよ。日本語と英語でも似てるだけで同じではないでしょ?」
一郎は正夢と予知夢はあまり知らないので、なんとなく分かった気がして頷いた。 一郎:「ふーん、成程ね」 そんな身の上話も尽き、ついにあの時間が来た。二人は食事が済むと席を立ち、沙織の会計するレジに向かった。 フィルが”助けてもらったお礼をしたい”と二人分を払おうとしたので、かっこつけた一郎。 一郎:「いいって、大丈夫だから」 レジにいる沙織を見ながら言った。フィルは助けてくれた一郎にどうしてもお礼がしたかった。 フィル:「助けてもらったから、私にご馳走させて」 そんな二人の押し問答を、レジで見ていた沙織が、フィルの視線を感じ、ニヤッとして、割り込んだ。 沙織:「一郎ちゃん、かっこつけないで、彼女の気持ち、ねっ」
フィルが沙織姫の方を大きな蒼い目で見つめ呟いた。 フィル:「沙織」 一郎は沙織の言葉に驚き、出鼻をくじかれた。 一郎:「あっ、イヤアー」 沙織は笑顔で二人を見送った。 沙織:「ありがとうございましたあ。気を付けてねっ。一郎ちゃん、フィルちゃん頼んだよ」 沙織:(心の中)「弟の様な一郎に(一郎、守ってやりたいなら、フィルちゃんの女心を分かれよ。しょうがないなあ)と思った」 そんな沙織を姉のように慕う一郎は、お道化て沙織に答えた。 一郎:「へーい姫」 ドライバーはいつも沙織の笑顔に勇気をもらっている。こんな美人で気立てがいいのに、未だに恋人もいないという噂。
二人は寒い夜空に見守られながら店を出て、駐車場のトラックに戻った。一郎はすぐにエンジンをかけ、ヘッドライトを点けた。 (カチッ、ドシュココ、ドアーンドルル) 一郎は助手席のフィルに食事の礼をユモアを交え言った。 一郎「ごちそうさまでございました。フィル姫」 沙織が飾り付けたイルミネーションを蒼い大きな目で見渡しながら笑みを浮かべて指さすフィル。 フィル:「こちらこそありがとう。一郎、見て、イルミ綺麗だよ」 一郎は、危険が去ったわけではないので、フィルを心配して言った。 一郎「綺麗だなイルミ。話変るけど、本当に駅まででいいの」 フィル(心の中):「(一郎って、子供みたい目を輝かせたり、大人みたいに男らしく正義感も強い不思議な人。これ以上迷惑かけられないな)と思った」 フィルはニコッとして優しく微笑みながら答えた。 フィル:「大丈夫よ。電車乗っちゃえば追いかけてこないでしょ?」
一郎とフィルが乗りこんだトラックが走り出そうとした。その時突然トラック無線が車内に響いた。 (...ピーガガ...ハローCQ...こちら) 本田が無線で一郎に連絡してきた。 無線本田:「"ハローCQ(こんちは)、一郎ちゃん聞こえる?どうぞ"と言った」 一郎は無線のマイクで応答する。 無線一郎:「"ハローCQ、メリット5(聞きやすい)です。本田さん。どうぞ"と返信した」 本田が、道路わきに停まっている黒い4WD車の状況を無線で詳しく伝えてくれた。 無線本田:「"追われてるって、言ってたでしょ、入り口路肩に怪しい4WD、これそうじゃね?どうぞ"と言った」
一郎は無線に応答した。 無線一郎:「"了解しました...裏道に回避します...どうぞ"と返信した」 本田は注意を促すメッセージを送信をした。 無線本田:「"裏道が狭いから、お気をつけて...どうぞ"と返信した」 一郎は本田に無線で礼をした。その後マイクをコンソールに置き、シフトをドライブに入れ車を出した。 無線一郎:「"そちらも...安全運転で...感謝致します"」 無線の交信が終わるとすぐにフィルに安全確認をし、黒服に見つからないように車のコースを裏道に変えた。 一郎:「行くよ...シートベルトOK?」
フィルは一郎の顔を見つつ安全確認をし、不安も口にした。 フィル:「うん、OK。でも見つからないように出られる?」 無線のお陰で脱出が可能な事を知り、一郎は自信をもってフィルを安心させた。 一郎:「任せなさいって」 国道から死角になるドライブイン裏手にある普段使わない出口を抜けて、未舗装道路から裏山に抜け出した。 トラックは静かに駐車場を出た。 (ドルル、ジャリジャリ) 一郎更にフィルを安心させる。 一郎:「ネッ、上手くいったでしょが」 その後トラックは気づかれない様に裏山の未舗装路を、静かに登って行った。
裏山の道路から、眼下にあるドライブインを見下ろすフィル。彼女は追手が気付かないことを確認し、安心した。 フィル:「本当だ。あいつら、気付いてないわ」 やがてトラックは、国道246号線に無事戻ると、JRの知り合いに事情を説明し、近くにトラックの入れる駅を探してもらい、県道山北藤野線76号線に入り、SL備品運びでの付き合いでお世話になった、JR御殿場線の山北駅に向かった。 駅前にゆっくりと車を停めると、街灯がバイオレット色の光で、駅周辺を染めていた。フィルは礼をいうと、助手席から、上手く降り、運転席側の一郎のところへ行き、にっこり笑い別れを告げた。 フィルは安全を確認した後、別れを告げ降りた。 (ツツ、キッ、ツーー、バタン) 何回も手を振るフィル。 フィル:「本当にありがとう。またどっかであおうね。バイバイ」
一郎が運転席から窓を開け、照れながらも手を振り続けて駅に向かうフィルを何度も見送った。 一郎は心の中で「(気を付けて行けよ、もう大丈夫だから)と、言いたかった」 ポケットからクチャクチャになった『キャメル』たばこを一本取り出し、最後の一本に百円ライターで火をつけた。 一郎:「ふー」 と言いながら一息つく。 一郎「さー帰りますか、ああっ最後の一本かよ。途中で買うか」 トラックのアクセルを吹かすとエンジン音が高まり、ギアーをドライブに入れると静かにその場を離れた。 (ドルル、ドウワン、ギ、カチッ、ツーードドー) 旅立つ人と送る人、人生色々である。フィルは無事電車に乗り、一郎のハンドルを握るトラックは静かに駅を後にした。暫くすると県道47号から、また一路国道246経由で、東名大井松田に向かった。
フィルは電車に乗り、窓の外を見ながら中川一郎のことを思い出していた。その時、ポケットの中からスマホの振動が感じられ、画面を見るとアメリカの友人ステファニーからの着信だった。二人は情報を交換し、何かを計画しているようだった。電車は東へと進んでいった。 フィルは心の中で「『ふふ、中川一郎は不思議なひとだったな。まさか?特徴は似ているけど探しているあの御方じゃないわよね?』と思った」 その時、突然、フィルの鞄の中のスマホが振動し、音を立てた。 (・・ブーブー・・) 受話器の向こうにフィルを呼ぶ若い女性の声。 スマホ:「"ハーイ、フィル、そっちはどうだった?"と言う声が聞こえた」 相手の女性は、アメリカの友人、キャビンアテンダントをしている、ステファニーだった。 フィルはスマホを通じてステファニーと情報を交換した。 スマホフィル:「"ハーイ、ステファ...こっちも、助けてくれた一郎が探しているあの御方と特徴が似ているの..."と伝えた。
フィルはステファニーに応答し何かを伝えた。 スマホステファ:「"フィル..なるほど...中川一郎が...あの御方?...ということ?"と尋ね返した」 スマホフィル:「"ステファ、中川一郎を調べてくれる?、頼むわ"と依頼した」 スマホステファ:「"わかったわ、それで、黒服はCIAやNSAと違う別組織よ"と報告した」 彼女たちの会話は英語とは異なり、時折英語も混ざった珍しい言葉だった。フィンランド語?NSAやCIA、オブとは…彼女たちは一体何者?特定の国のエージェント?一郎を調べるってどいうことか?謎は深まり新しい冒険の始まりを思わせる。 電車は東に向かって山里にレール音を響かせ疾走して行った。 (ガタンガタンガー)
第一章「追われる女」はこれで終わり、次回はいよいよ、第二章『TVトークショー』第一節『徹の企て』予定です。親友、徹の登場、そしてテレビプロデューサーの河島との出逢い、第二章の舞台は、横須賀から東京へ、乞うご期待! 物語の主要な要素を簡潔に伝えています。ただし、物語の詳細やキャラクター間の関係性などは省略されています。それらを理解するためには、プロローグから全文を読むことをお勧めします。 ラジオのDJ:(今日も一日お疲れ様ー。そんな素敵なあなたに、『ドゥービー・ブラザーズ』『ロング・トレイン・ランニン』明日もがんばってー、んじゃまたあおうぜ) ・・To Be Continued・・
■データ 本文*で囲った言葉*
※リル⇒この物語で創造した架空企業ーユニバサル雑誌UFOが使うAIのような電子頭脳のコードネーム
※miracle⇒奇跡、信じられないこと、本編ではすごーい。おまけ⇒Jesus⇒ジーザス は、イエス・キリストの「イエス」の英語読みである。このため、映画や演劇などには「ジーザス」という言葉を多用した作品が多く存在する。また、「おお神よ」という表現や「神様!(助けてください)」という場面などに「ジーザス」ということもある。日本語でいえば感嘆詞としての「南無三」に近い。
※キャメル→たばこの商品名キャメルとは英語で『らくだ』のことで、パッケージに描かれているのは『オールドジョー』という名前の『ひとこぶらくだ』である。
※リアルドリームreal dream⇒本編では予知夢、正夢→事実と一致する夢。 将来、それが現実になる夢やデジャブ過去に経験・体験したことのない、初体験の事柄であるはずにも関わらず、かつて同じような事を体験したことがあるかのような感覚に包まれること。
※トンボ⇒片道輸送のこと。帰りは荷物なしで会社にというような意味
※一之宮のルミ⇒著者が好きな講習ワインの老舗ワイナリー
※シューエルホースガール→shrew horse girl=じゃじゃ馬娘とは、特に目上の人の言うことを聞かないで暴挙に走る若い女性のことを意味しています。 その他にも、人に中々慣れない暴れ馬という意味も持っています。
※ドライブイン→(英:drive-inまたはdrive-inn)とは、自動車に乗車したままで乗り入れることのできる商業施設のことである。本来はドライバーの休息、食事の店に簡易な宿泊施設を備えたdrive-innが原型で、innは小規模な家族的旅館を意味した。
※妖精→妖精(ようせい、英語: fairy、faery、フランス語: fée)は、神話や伝説に登場する超自然的な存在、人間と神の中間的な存在の総称。だが物語では主人公やその周りのこの世にあり得ない理想の女性を指す。
※キャブ=本編ではトラックの運転席がある部分をいう。
※☆The Doobie Brothersは著者が大好きなアメリカカルフォルニア出身のROCKBANDで、オールマン・ブラザーズ・バンドやレ-ナード・スキナード、ZZトップなどの1960~80年代の南部音楽=サザンROCK
に影響され80年代に特に活躍、最初は4人BANDで、スタートし、現在は大所帯入れ替わり、BANDというよりはユニットともいえる、2023年4月頃来日予定
※御坂峠
呼称は御坂隧道の富士吉田側入り口地点(標高1300 m)付近を指すようになる。また、古道の峠を「旧御坂峠」、御坂隧道の峠を「新御坂峠」と分けて呼称する場合もある。 1994年(平成6年)11月20日に後述の御坂トンネル有料道路が無料開放・国道指定されたのに伴い、国道指定を解除され、県道富士河口湖笛吹線のトンネルとなった。
(注)挿絵はオリジナル画と、フリー素材イラストACさん、イラストボックス、イラスト屋さん、街の記録さんなどのフォトやイラストをDLし、模写しています。内容イメージに合うよう色や季節感など変たりし、オリジナルと合成して使っています。ウィキペディア(Wikipedia)ウェブリオweblio、街の記録にリンク貼っています。
(注)またオリジナルや改定オリジナルの著作権利はCNBweb日本放送ーradio室に全てありますので、転写はご注意下さい。
hiro900